ハイブリッドストレージ - AWS Storage Gateway によるオンプレミスとクラウドの統合
AWS Storage Gateway を使ったオンプレミスとクラウドストレージの統合を解説。S3 File Gateway・FSx File Gateway・Volume Gateway・Tape Gateway の 4 タイプの使い分けと導入パターンを紹介します。
ハイブリッドストレージの課題と Storage Gateway の役割
多くの企業がクラウド移行を進める中、オンプレミスのアプリケーションやワークフローを即座にすべてクラウドに移行することは現実的ではありません。既存のファイルサーバー、バックアップシステム、業務アプリケーションはオンプレミスで稼働し続ける一方、クラウドのスケーラビリティとコスト効率を活用したいというニーズがあります。AWS Storage Gateway は、オンプレミスの環境から AWS のストレージサービスに標準プロトコルでアクセスするためのハイブリッドストレージサービスです。オンプレミスに VM またはハードウェアアプライアンスとしてデプロイし、NFS・SMB・iSCSI といった標準プロトコルを提供します。アプリケーション側の変更は不要で、既存のファイルアクセスパスをゲートウェイに向けるだけでクラウドストレージとの統合が完了します。ローカルキャッシュにより頻繁にアクセスするデータは低レイテンシで読み書きでき、全データは AWS に自動的に同期されます。
この分野について体系的に学びたい方は、関連書籍 (Amazon) も参考になります。
4 つのゲートウェイタイプ
Storage Gateway は 4 つのタイプを提供し、ユースケースに応じて選択します。S3 File Gateway は NFS/SMB プロトコルでファイルを S3 オブジェクトとして保存します。ファイルパスがそのまま S3 のキーにマッピングされ、S3 に保存されたデータは Athena、Redshift Spectrum、SageMaker などの分析サービスから直接アクセスできます。FSx File Gateway は SMB プロトコルで Amazon FSx for Windows File Server にアクセスするためのゲートウェイで、Windows ファイルサーバーのクラウド移行に最適です。Active Directory 統合やファイルレベルのアクセス制御もサポートします。Volume Gateway は iSCSI プロトコルでブロックストレージを提供し、Cached モード (データは S3、キャッシュはローカル) と Stored モード (データはローカル、スナップショットは S3) の 2 つの動作モードがあります。スナップショットは EBS スナップショットとして保存され、EC2 にアタッチして DR 環境を構築できます。Tape Gateway は iSCSI VTL (仮想テープライブラリ) として動作し、既存のバックアップソフトウェアから物理テープと同じ操作でクラウドにバックアップできます。
デプロイと運用
Storage Gateway は VMware ESXi、Microsoft Hyper-V、Linux KVM 上の VM としてデプロイするか、AWS が提供するハードウェアアプライアンスを使用します。VM デプロイの場合、最小要件は 4 vCPU、16 GB RAM、キャッシュ用のローカルディスクです。キャッシュディスクのサイズはワークロードに応じて 150 GB 〜 64 TB の範囲で設定します。EC2 インスタンス上にデプロイすることも可能で、VPC 内のアプリケーションから S3 へのファイルアクセスを NFS/SMB で提供するユースケースに使用します。帯域幅の制御機能により、ゲートウェイが使用するネットワーク帯域を時間帯ごとにスケジュール設定でき、業務時間中はアプリケーショントラフィックを優先し、夜間にデータ同期を実行するといった運用が可能です。CloudWatch メトリクスでキャッシュヒット率、アップロード/ダウンロードスループット、ゲートウェイの健全性を監視できます。
ユースケースと DataSync との使い分け
Storage Gateway の主なユースケースは、オンプレミスアプリケーションからのクラウドストレージ利用 (日常的なファイルアクセス)、バックアップとアーカイブ (Tape Gateway による物理テープの置き換え)、DR (Volume Gateway のスナップショットによる EC2 への復元) です。AWS DataSync との使い分けも重要です。DataSync はデータの一括移行や定期的な同期に特化したサービスで、オンプレミスから S3/EFS/FSx への大量データ転送を高速に実行します。Storage Gateway は日常的なファイルアクセスのためのゲートウェイであり、アプリケーションが継続的にデータを読み書きするユースケースに適しています。移行フェーズでは DataSync で大量データを転送し、移行完了後は Storage Gateway で日常的なアクセスを提供するという組み合わせが効果的です。料金は、S3 File Gateway の場合、ゲートウェイ自体の料金は不要で、S3 のストレージ料金とリクエスト料金のみが課金されます。
さらに詳しく知りたい方は、関連書籍 (Amazon) で理解を深められます。
まとめ - Storage Gateway の活用指針
AWS Storage Gateway は、オンプレミスとクラウドストレージをシームレスに統合するハイブリッドストレージサービスです。S3 File Gateway・FSx File Gateway・Volume Gateway・Tape Gateway の 4 タイプで、ファイル共有・ブロックストレージ・バックアップの幅広いユースケースに対応します。ローカルキャッシュによる低レイテンシアクセスと、クラウドの無制限のスケーラビリティを両立できます。オンプレミスのストレージ容量が逼迫している場合、バックアップの物理テープを廃止したい場合、クラウドへの段階的な移行を進めたい場合に、Storage Gateway は有力な選択肢です。
AWS の優位点
- オンプレミスのアプリケーションから標準プロトコル (NFS、SMB、iSCSI) で S3・FSx・EBS にシームレスにアクセス可能
- S3 File Gateway はファイルを S3 オブジェクトとして保存し、Athena・Redshift Spectrum などの分析サービスと直接連携
- ローカルキャッシュにより頻繁にアクセスするデータは低レイテンシで読み書きでき、全データは S3 に自動的に同期
- Tape Gateway は既存のバックアップソフトウェア (Veeam、Commvault、Veritas) と互換性があり、物理テープからの移行が容易
- Volume Gateway のスナップショットは EBS スナップショットとして保存され、EC2 インスタンスにアタッチして DR 環境を構築可能
- VM (VMware ESXi、Hyper-V、KVM) またはハードウェアアプライアンスとしてオンプレミスにデプロイ
- Azure の同等サービスは Azure File Sync (ファイル同期) と Azure StorSimple (廃止予定) であり、Storage Gateway は 4 タイプの統合的なゲートウェイとして幅広いユースケースをカバー