Elastic IP アドレスの管理と設計 - 静的 IP の活用とコスト最適化

Elastic IP の割り当て、EC2 との関連付け、未使用 EIP のコスト影響、代替手段の検討を解説します。

Elastic IP の概要

Elastic IP (EIP) は EC2 インスタンスに関連付ける静的パブリック IPv4 アドレスです。通常の EC2 パブリック IP はインスタンスの停止・起動で変更されますが、EIP は明示的に解放するまで同じ IP アドレスを維持します。DNS の A レコードで直接 IP を指定する場合や、ファイアウォールの許可リストに IP を登録する場合に使用します。

コスト最適化と代替手段

(2026 年 8 月時点・米国東部 (バージニア北部) / アジアパシフィック (東京)) 2024 年 2 月以降、全てのパブリック IPv4 アドレスが時間課金の対象になり、単価はバージニア北部・東京のいずれも 1 アドレスあたり 0.005 USD/時です。未使用の EIP はもちろん、EC2 に関連付け済みの EIP にも同じ単価で課金されるため、不要な EIP の棚卸しが重要です。ALB を使用する場合は ALB の DNS 名を CNAME で参照するため EIP は不要で、CloudFront を使用する場合も同様です。ただしロードバランサー自身が各アベイラビリティーゾーンで使うパブリック IPv4 アドレスには課金が続くため、削減できるのはインスタンス側に割り当てていたアドレス分だと見込んでおきます。EIP が必要なケースは、外部システムが IP アドレスでアクセスを許可している場合、SMTP サーバーの逆引き DNS を設定する場合などに限定されます。

EIP の設計パターンと IPv6 移行

EIP はフェイルオーバー構成で活用されます。EC2 インスタンスの障害時に Lambda で EIP を別のインスタンスに再関連付けすることで、DNS の TTL を待たずに即座にトラフィックを切り替えられます。固定 IP で負荷分散したい場合は、インターネット向け NLB の作成時に、アベイラビリティーゾーン (サブネット) ごとに事前確保した EIP を割り当てます。アベイラビリティーゾーンの有効化・無効化は運用開始後も随時行え、追加するサブネットには EIP を指定できますが、有効化済みのゾーンの EIP を差し替えるにはサブネットをいったん削除してから追加し直す必要があり、新しいネットワークインターフェイスの作成を伴います。切り替えの手間を避けるため、必要な数の EIP を先に確保してから NLB を作成するのが実務的です。IPv6 への移行も EIP への依存を減らす手段です。VPC でデュアルスタックを有効にし、EC2 インスタンスを IPv6 で直接公開する経路では、そのインスタンスにパブリック IPv4 アドレスを持たせる必要がなくなります。一方 ALB には EIP を割り当てられないため、固定 IP が要件になる場合の選択肢は NLB か、Global Accelerator の静的 Anycast IP のいずれかです。Global Accelerator を使えばリージョン障害時のフェイルオーバーも含めた固定 IP を実現でき、EIP の代替として検討できます。

パブリック IPv4 の課金と削減策

(2026 年 8 月時点・米国東部 (バージニア北部) / アジアパシフィック (東京)) パブリック IPv4 アドレスの単価は、バージニア北部・東京とも in-use (リソースに関連付け済み) と idle (割り当てただけで未使用) の双方が 0.005 USD/時で、1 アドレスを 1 か月 (730 時間換算) 保持すると約 3.65 USD になります。無料利用枠については、EC2 の無料利用枠の対象アカウントで月 750 時間分の in-use パブリック IPv4 アドレス利用が無料になると公式に案内されていますが、対象は in-use のみで idle のアドレスは含まれません。無料利用枠の提供形態はアカウントの作成時期によって異なるため、自分のアカウントに適用されるかは請求コンソールの無料利用枠画面で確認します。BYOIP で持ち込んだ自社所有のアドレスは、この時間課金の対象外です。Amazon VPC IP Address Manager (IPAM) の Public IP Insights で、アカウント内の全パブリック IPv4 アドレスの使用状況を可視化し、不要な EIP や未使用のパブリック IP を特定します。EC2 インスタンスへの直接アクセスが不要な場合は、パブリック IP の自動割り当てを無効にし、Systems Manager Session Manager 経由で接続します。ALB 経由のアクセスに統合すれば、個々のインスタンスに EIP を割り当てる必要がなくなります。Cost Explorer で Elastic IP のコストを追跡し、月次で不要な EIP の棚卸しを実施する運用が推奨されます。

割り当てと関連付けの基本操作

EIP はリージョン単位で割り当て、EC2 インスタンスや NAT ゲートウェイ、ネットワークインターフェースに関連付けて使います。インスタンスに紐づけた EIP は、停止・起動を繰り返しても保持されるため、IP を固定したい用途に向きます。関連付けを別のインスタンスへ付け替えれば、IP を変えずに背後のサーバーだけを差し替えられます。ネットワークインターフェース (ENI) に EIP を関連付けておき、その ENI ごと別インスタンスに移す方法もあり、より柔軟な切り替えが可能です。

BYOIP で自社の IP を持ち込む

すでに自社で保有している IP アドレス範囲がある場合、BYOIP (Bring Your Own IP) で AWS に持ち込み、EIP として利用できます。長年使ってきた IP を顧客やパートナーの許可リストに登録済みで変更が難しい、といった事情があるときに有効です。持ち込んだアドレスは AWS が広告し、EIP と同じように関連付けて使えます。これにより、移行に伴う IP 変更の影響を回避しつつ、AWS のネットワーク基盤を活用できます。導入には所有権を証明する手続きが必要です。

クォータと棚卸しの運用

EIP はリージョンあたりの割り当て数に既定の上限があり、必要に応じてクォータ引き上げを申請します。上限は無秩序な確保を防ぐ仕組みでもあるため、使っていない EIP は解放して整理するのが基本です。タグを使って用途や担当を記録しておくと、棚卸しの際にどの EIP が現役かを判断しやすくなります。関連付けが外れた EIP は意図せず残りやすいので、定期的に未関連付けの EIP を洗い出し、不要なものを解放する運用を仕組み化すると、無駄なコストと管理の混乱を防げます。

よくある誤解と注意点

「使っていない EIP だけが課金される」という理解は誤りで、インスタンスに関連付けている EIP も含め、保有しているパブリック IPv4 全般が課金対象です。また、EIP を関連付けただけではセキュリティは確保されません。アクセス制御はセキュリティグループやネットワーク ACL で別途設計する必要があります。NAT ゲートウェイのアウトバウンド用途では EIP を 1 つ消費しますが、これは可用性のために必要なものです。固定 IP が本当に必要かを設計段階で見極め、不要なら DNS 名ベースの参照に寄せるのが堅実です。

まとめ

Elastic IP は静的パブリック IPv4 アドレスを提供しますが、2024 年 2 月以降は全てのパブリック IPv4 アドレスが時間課金の対象で、単価はバージニア北部・東京とも 0.005 USD/時です (2026 年 8 月時点)。ALB や CloudFront への集約でインスタンス側の EIP を削減し、固定 IP が必要な場面は NLB のサブネットごとの EIP 割り当てか、Global Accelerator の静的 Anycast IP で受け止めます。IPv6 デュアルスタックの導入も、パブリック IPv4 アドレスを持たせる範囲を狭める有効な削減策です。

参考資料 (AWS 公式)

本ページの一次情報は AWS 公式サイトおよび公式ドキュメントです。最新の仕様 / 料金は次の公式ページで確認できます。

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