Elastic IP アドレスの管理と設計 - 静的 IP の活用とコスト最適化
Elastic IP の割り当て、EC2 との関連付け、未使用 EIP のコスト影響、代替手段の検討を解説します。
Elastic IP の概要
Elastic IP (EIP) は EC2 インスタンスに関連付ける静的パブリック IPv4 アドレスです。通常の EC2 パブリック IP はインスタンスの停止・起動で変更されますが、EIP は明示的に解放するまで同じ IP アドレスを維持します。DNS の A レコードで直接 IP を指定する場合や、ファイアウォールの許可リストに IP を登録する場合に使用します。
コスト最適化と代替手段
2024 年 2 月以降、全てのパブリック IPv4 アドレスに 0.005 USD/時の課金が適用されています。未使用の EIP はもちろん、EC2 に関連付け済みの EIP にも課金されるため、不要な EIP の棚卸しが重要です。ALB を使用する場合は ALB の DNS 名を CNAME で参照し、EIP は不要です。CloudFront を使用する場合も同様です。EIP が必要なケースは、外部システムが IP アドレスでアクセスを許可している場合、SMTP サーバーの逆引き DNS を設定する場合などに限定されます。
EIP の設計パターンと IPv6 移行
EIP はフェイルオーバー構成で活用されます。 EC2 インスタンスの障害時に Lambda で EIP を別のインスタンスに再関連付けすることで、 DNS の TTL を待たずに即座にトラフィックを切り替えられます。 NLB のターゲットとして EIP を持つインスタンスを登録すると、固定 IP での負荷分散が可能です。 IPv6 への移行を進めることで EIP への依存を減らせます。 VPC でデュアルスタックを有効にし、 ALB に IPv6 アドレスを割り当てると、 IPv6 対応クライアントからのアクセスでは EIP が不要になります。 Global Accelerator の静的 Anycast IP を使えば、リージョン障害時のフェイルオーバーも含めた固定 IP を実現でき、 EIP の代替として検討できます。 静的 IP のネットワーク設計を深く理解するには、専門書籍 (Amazon)が役立ちます。
パブリック IPv4 の課金と削減策
2024 年 2 月以降、全てのパブリック IPv4 アドレスに 0.005 USD/時 (約 3.60 USD/月) が課金されます。VPC の Public IP Insights で、アカウント内の全パブリック IPv4 アドレスの使用状況を可視化し、不要な EIP や未使用のパブリック IP を特定します。EC2 インスタンスへの直接アクセスが不要な場合は、パブリック IP の自動割り当てを無効にし、Systems Manager Session Manager 経由で接続します。ALB 経由のアクセスに統合すれば、個々のインスタンスに EIP を割り当てる必要がなくなります。Cost Explorer で Elastic IP のコストを追跡し、月次で不要な EIP の棚卸しを実施する運用が推奨されます。
割り当てと関連付けの基本操作
EIP はリージョン単位で割り当て、EC2 インスタンスや NAT ゲートウェイ、ネットワークインターフェースに関連付けて使います。インスタンスに紐づけた EIP は、停止・起動を繰り返しても保持されるため、IP を固定したい用途に向きます。関連付けを別のインスタンスへ付け替えれば、IP を変えずに背後のサーバーだけを差し替えられます。ネットワークインターフェース (ENI) に EIP を関連付けておき、その ENI ごと別インスタンスに移す方法もあり、より柔軟な切り替えが可能です。
BYOIP で自社の IP を持ち込む
すでに自社で保有している IP アドレス範囲がある場合、BYOIP (Bring Your Own IP) で AWS に持ち込み、EIP として利用できます。長年使ってきた IP を顧客やパートナーの許可リストに登録済みで変更が難しい、といった事情があるときに有効です。持ち込んだアドレスは AWS が広告し、EIP と同じように関連付けて使えます。これにより、移行に伴う IP 変更の影響を回避しつつ、AWS のネットワーク基盤を活用できます。導入には所有権を証明する手続きが必要です。
クォータと棚卸しの運用
EIP はリージョンあたりの割り当て数に既定の上限があり、必要に応じてクォータ引き上げを申請します。上限は無秩序な確保を防ぐ仕組みでもあるため、使っていない EIP は解放して整理するのが基本です。タグを使って用途や担当を記録しておくと、棚卸しの際にどの EIP が現役かを判断しやすくなります。関連付けが外れた EIP は意図せず残りやすいので、定期的に未関連付けの EIP を洗い出し、不要なものを解放する運用を仕組み化すると、無駄なコストと管理の混乱を防げます。
よくある誤解と注意点
「使っていない EIP だけが課金される」という理解は誤りで、インスタンスに関連付けている EIP も含め、保有しているパブリック IPv4 全般が課金対象です。また、EIP を関連付けただけではセキュリティは確保されません。アクセス制御はセキュリティグループやネットワーク ACL で別途設計する必要があります。NAT ゲートウェイのアウトバウンド用途では EIP を 1 つ消費しますが、これは可用性のために必要なものです。固定 IP が本当に必要かを設計段階で見極め、不要なら DNS 名ベースの参照に寄せるのが堅実です。
まとめ
Elastic IP は静的パブリック IPv4 アドレスを提供しますが、2024 年以降の課金強化で全パブリック IPv4 に 0.005 USD/時が適用されます。ALB や CloudFront への移行で EIP への依存を削減し、Global Accelerator の静的 Anycast IP でリージョン障害時のフェイルオーバーも含めた固定 IP を実現できます。IPv6 デュアルスタックの導入も有効な削減策です。