Amazon CloudWatch Internet Monitor でインターネットパフォーマンスを監視 - 可用性とレイテンシの可視化

Internet Monitor によるインターネット経由のアプリケーションパフォーマンス監視、ISP 別の可用性分析、ヘルスイベントの検出を解説します。

Internet Monitor の概要

Internet Monitor は世界 500 以上の都市のインターネット測定データを活用し、CloudFront ディストリビューションや VPC のトラフィックを分析し、インターネット経由のアプリケーションパフォーマンスを監視するサービスです。AWS が世界中で収集するインターネットの測定データと、アプリケーションのトラフィックデータを組み合わせて、ISP・地域別の可用性とレイテンシを可視化します。従来の外形監視 (Synthetic Monitoring) がプローブ地点からの到達性を測るのに対し、Internet Monitor は実際のユーザートラフィックの経路上で発生している問題を検出するため、ユーザー体験により近い監視が実現できます。モニターの作成は AWS マネジメントコンソールから数クリックで完了し、CloudFront ディストリビューションまたは VPC を指定するだけで監視が開始されます。

ヘルスイベントと活用パターン

Internet Monitor はインターネット側の障害がアプリケーションに影響を与えている場合にヘルスイベントを生成します。特定の ISP で可用性が低下している、特定の地域でレイテンシが増加しているといった情報が提供されます。ヘルスイベントには影響を受けているトラフィック量とユーザー数の推定が含まれるため、障害の影響範囲を定量的に把握できます。EventBridge 経由で通知を受け取り、CloudFront のオリジン切り替えや Route 53 のフェイルオーバーを実行する自動対応ワークフローを構築できます。トラフィックの地理的分布の可視化は、CDN のエッジロケーション選定やリージョン配置の最適化にも活用できます。ヘルスイベントは可用性低下とレイテンシ増加の 2 種類に分類され、それぞれ閾値をカスタマイズできます。

トラフィック最適化への活用

Internet Monitor のデータを活用して、CloudFront のオリジンフェイルオーバーや Route 53 のヘルスチェックと組み合わせたトラフィック最適化が可能です。特定の ISP や地域でパフォーマンスが低下している場合、Route 53 の地理的ルーティングで別のリージョンにトラフィックを誘導する判断材料になります。EventBridge 経由でヘルスイベントを受信し、Lambda で自動的に CloudFront のキャッシュ動作を変更したり、SNS で運用チームに通知したりするワークフローを構築できます。過去のパフォーマンスデータを分析して、特定の時間帯や地域で発生する定常的なパフォーマンス低下パターンを特定し、CDN の設定やオリジンの配置を最適化します。S3 へのログエクスポートを有効化すると、Athena で長期的なトレンド分析やカスタムレポートの作成が可能になります。 Internet Monitor のネットワーク設計を深く理解するには、専門書籍 (Amazon)が役立ちます。

Internet Monitor の料金と設定

Internet Monitor はモニター対象のリソース (CloudFront ディストリビューション、VPC) のトラフィック量に基づいて課金されます。モニタリング対象のトラフィック割合を 1-100% で設定でき、コストとカバレッジのバランスを調整します。大規模なトラフィックでは 10-25% のサンプリングでも統計的に十分な精度が得られます。CloudWatch メトリクスとして可用性スコアとパフォーマンススコアが発行されるため、既存の CloudWatch ダッシュボードやアラームに統合できます。ヘルスイベントの閾値を調整して、軽微なパフォーマンス変動でのアラート疲れを防止します。1 アカウントあたりモニター数の上限は数十個あり、マルチアカウント環境では各アカウントで個別にモニターを作成します。

ユースケース別の導入パターン

グローバル SaaS アプリケーションでは、CloudFront を監視対象にして地域別のエンドユーザー体験を把握し、パフォーマンスが低い地域を特定して追加のエッジロケーションや Origin Shield の導入を判断します。マルチリージョン構成の Web アプリケーションでは、特定リージョンへのルーティングで問題が発生した際に EventBridge + Lambda で自動的に Route 53 の重み付けルーティングを変更し、障害リージョンからトラフィックを退避させます。VPC 内のプライベートアプリケーション (社内 SaaS やリモートワーカー向けツール) では、VPC を監視対象にして特定 ISP 経由のアクセスが劣化していることを検知し、VPN ゲートウェイの追加や AWS Direct Connect への切り替え検討の根拠にします。金融・医療などレイテンシ要件の厳しい業界では、パフォーマンススコアの閾値を厳格に設定し、わずかな劣化でも即座に検知する体制を構築します。

Synthetic Monitoring との使い分け

CloudWatch Synthetics (Canary) はプローブ地点から定期的にリクエストを送信して可用性とレスポンスタイムを測定する外形監視で、Internet Monitor とは補完関係にあります。Synthetics はアプリケーション自体の障害 (サーバーダウン、コードバグ、証明書切れ) を検出するのに適し、Internet Monitor はアプリケーションは正常だがユーザーまでの経路上で障害が発生しているケースを検出します。両方を併用することで、「アプリケーション起因の障害か、インターネット経路起因の障害か」を即座に切り分けでき、MTTR (平均復旧時間) を短縮します。Synthetics は特定の URL やワークフローをスクリプトで検証するためトランザクション監視に強く、Internet Monitor は広域の ISP / 地域障害の面的な把握に強いという役割分担です。

まとめ

Internet Monitor はインターネット経由のアプリケーションパフォーマンスを ISP・地域別に可視化するサービスです。インターネット側の障害を自動検出してヘルスイベントで通知し、Route 53 の地理的ルーティングや CloudFront のオリジンフェイルオーバーと組み合わせたトラフィック最適化の判断材料を提供します。Synthetics との併用で障害切り分けを高速化し、サンプリングレートの調整でコストとカバレッジのバランスを制御します。