Amazon Kendra エンタープライズ検索 - 新規受付終了と移行ガイド

Amazon Kendra は 2026 年 6 月 30 日にメンテナンスモードへ移行し、7 月 30 日で新規顧客の受付を終了。公式の受け皿である Amazon Bedrock Knowledge Bases への移行方針と、既存インデックスの運用に必要なコネクタ設定・精度チューニング・RAG 統合を解説します。

Kendra の概要

Amazon Kendra は 2026 年 6 月 30 日にメンテナンスモードへ移行し、2026 年 7 月 30 日をもって新規顧客の受付を終了しました。既存顧客は継続して利用でき、バグ修正とセキュリティ更新も提供されますが、新機能の要望は受け付けられません (2026 年 8 月時点)。AWS は既存アプリケーションの移行先、および新規に検索アプリケーションを実装する先として Amazon Bedrock Knowledge Bases (Bedrock Managed Knowledge Base) を公式に推奨しています。本記事は、既存インデックスを運用しながら移行を計画する読者に向けて、Kendra の仕組みと移行時の判断材料を整理したものです。Kendra は ML を活用したエンタープライズ検索サービスです。従来のキーワード検索とは異なり、自然言語で「有給休暇の申請方法は?」と質問すると、社内規程ドキュメントから該当箇所を抽出して直接回答します。検索結果はドキュメントの関連箇所をハイライト表示し、データソースコネクタは公式の比較表で 32 種類以上と記載されています (2026 年 8 月時点)。対応言語は公式ドキュメントの言語コード表に 34 のロケールが並び、そのうちフルセマンティック検索が有効なのは既定言語の英語と、日本語・中国語・フランス語・ドイツ語・韓国語・ポルトガル語 (ブラジル)・スペイン語の合計 8 言語です。RAG のリトリーバーとしても活用できます。クエリとドキュメントの意味的な近さを評価するセマンティックマッチングを行うため、表記揺れや同義語を含む検索にもキーワード一致だけに頼らず対応します (内部で使われるモデルの構成は公開されていません)。

データソースと精度チューニング

データソースコネクタで S3、SharePoint、Confluence、ServiceNow などの社内システムと接続し、定期的にクロール・インデックス化します。ACL 対応のコネクタでは、ユーザーの閲覧権限に基づいて検索結果がフィルタリングされます。検索精度のチューニングでは、カスタム同義語辞書の登録、重要度ブースト (特定フィールドの重み付け)、ユーザーフィードバックの活用が有効です。ただしカスタム同義語は公式ドキュメントの記載どおり既定言語の英語のみが対象で、増分学習とフィードバック、クエリ候補の提示も同じく英語限定です (2026 年 8 月時点)。日本語の社内文書で略語や表記揺れを吸収したい場合は、同義語辞書ではなくカスタムドキュメントエンリッチメントでの正規化や、メタデータフィールドの設計で補います。フィールドブーストは倍率ではなく重要度 (Importance) の指定で、API リファレンス上の有効範囲は 1〜10 の整数です。タイトルなどの重要なフィールドの重要度を上げるとノイズの多い本文よりも上位に来やすくなりますが、関連度チューニングは順位付けを左右する要素の一つであり、それ自体で新たなドキュメントが検索結果に含まれるようになるわけではない点に注意します。

RAG と生成 AI 統合

Kendra は RAG (Retrieval-Augmented Generation) のリトリーバーとして、生成 AI アプリケーションに高精度な検索結果を提供します。Amazon Bedrock の基盤モデルと Kendra を組み合わせ、社内ドキュメントに基づく正確な回答を生成するチャットボットを構築できます。Kendra の Retrieve API で関連ドキュメントの抜粋を取得し、プロンプトのコンテキストとして基盤モデルに渡します。ACL ベースのアクセス制御により、ユーザーの権限に応じた検索結果のみが返されるため、機密情報の漏洩を防止します。カスタムドキュメントエンリッチメントで、インデックス登録前に Lambda でメタデータの追加やテキストの前処理を実行できます。

移行先の選び方 - Bedrock Knowledge Bases と Amazon Q Business の現状

これから社内検索や RAG を構築する場合、受け皿は Amazon Bedrock Knowledge Bases に一本化して考えるのが 2026 年 8 月時点の出発点です。かつて Kendra の上位に位置づけられていた Amazon Q Business も新規顧客の受付を終了し、既存顧客に対してバグ修正とセキュリティ更新のみが継続する状態になりました。AWS は Q Business の既存アプリケーションの移行先、および新規の生成 AI・エージェント型ソリューションの実装先として Amazon Quick を推奨しており、移行はまず既存の Q Business インデックスの持ち込み (BYOI: Bring Your Own Index) から始め、その後必要に応じてデータソースを Quick 側のインデックスへ移す流れが案内されています。そのため「検索 UI を自作するなら Kendra、チャット体験ごと任せるなら Q Business」という従来の住み分けは、どちらも新規には契約できない前提へ置き換わっています。公式の比較表では、コネクタは Kendra が 32 種類以上に対して Bedrock Knowledge Bases が 7 種類、検索方式は Kendra がキーワード・セマンティック・ハイブリッドに対応し Bedrock Knowledge Bases はハイブリッド、回答生成は Kendra が外部の LLM 呼び出しを前提とするのに対し Bedrock Knowledge Bases は RetrieveAndGenerate を内蔵、エージェント型の取得は Kendra では非対応、1 クエリで返せる最大結果件数は双方 100 件と整理されています。コネクタの網羅性だけは Kendra が優位なので、移行の実務では未対応のデータソースをどう埋めるかが最初の検討点になります。既存の Kendra インデックスを運用中であれば、Retrieve API や Query API を直接呼び出してランキングとプレゼンテーション層を自社アプリケーションに組み込む構成はそのまま継続できます。GenAI Enterprise Edition インデックスは Bedrock Knowledge Bases のリトリーバーとしても指定できるため、インデックス資産を保ったまま回答生成側から先に Bedrock へ寄せる段階的な移行も選択肢になります。

設計のベストプラクティスと落とし穴

インデックス設計では、1 ドキュメントを適切なチャンクサイズに分割することが検索精度を大きく左右します。Kendra はドキュメントあたり最大 5 MB のテキストを処理しますが、長大な PDF をそのまま取り込むと回答の焦点がぼやけます。事前に論理セクション単位で分割し、各チャンクにメタデータ (部署、文書種別、公開日) を付与すると、ファセット検索やフィルタが活用でき精度が上がります。よくある落とし穴は同期スケジュールの設定ミスです。コネクタの同期を 1 時間ごとに設定すると、変更がないドキュメントにも再インデックスが走ります。ここで増えるのはクエリ側の容量ではなく同期側の課金で、Basic 系インデックスでは同期の実行中に 1 時間あたり 0.35 USD、加えてスキャンしたドキュメント 100 万件あたり 1 USD が発生します (2026 年 8 月時点・バージニア北部と東京)。GenAI Enterprise インデックスの場合はコネクタ 1 インデックスあたり月 30 USD の定額で、月 500 時間までの同期が含まれます。クエリユニットは Query API と Retrieve API で共有される検索側の容量で、コネクタの同期では消費されません。変更検出が有効なコネクタでは差分同期を利用し、S3 コネクタの場合は EventBridge のオブジェクト作成イベントを起点に StartDataSourceSyncJob を呼び出す (または BatchPutDocument で直接投入する) イベント駆動の取り込みが費用対効果に優れます。StartDataSourceSyncJob は同期がすでに実行中だと ResourceInUseException を返すため、イベントが集中する構成では呼び出しをまとめる工夫が必要です。FAQ データソースは CSV または JSON で Q&A ペアを登録でき、定型質問への回答を最上位に表示させるため、サポートデスクの負荷削減に直結します。

Kendra の料金と最適化

(2026 年 8 月時点・バージニア北部と東京) Kendra の料金はインデックスの種類と、コネクタの同期、ドキュメント数で決まります。インデックスは GenAI Enterprise・Basic Enterprise・Basic Developer の 3 種類です。GenAI Enterprise は 1 時間あたり 0.32 USD (720 時間換算で約 230 USD) で、20,000 ドキュメントまたは抽出テキスト 200 MB と 0.1 QPS (約 8,000 クエリ/日) が目安です。Basic Enterprise は 1 時間あたり 1.4 USD で 100,000 ドキュメントまたは 30 GB と約 8,000 クエリ/日、Basic Developer は 1 時間あたり 1.125 USD で 10,000 ドキュメントまたは 3 GB と 0.05 QPS (約 4,000 クエリ/日) です。容量を超える分は追加のストレージユニットとクエリユニットで拡張し、単価は GenAI Enterprise が 1 時間あたり 0.25 USD と 0.07 USD、Basic Enterprise がいずれも 0.7 USD です。Basic 系インデックスとコネクタ同期の単価は、公式の料金 API 上でバージニア北部と東京で同額です。一方 GenAI Enterprise の単価は東京の料金一覧に存在せず、公式のクォータページでも利用可能リージョンとしてバージニア北部・オレゴン・アイルランド・シドニーが挙げられています (東京では選択できません)。コネクタの同期スケジュールをデータ更新頻度に合わせて最適化し、不要な再インデックスを避けます。FAQ データソースを活用して、よくある質問への回答を直接返すことで、検索精度とユーザー体験を向上させます。Basic Developer は高可用性構成を持たず、公式にも本番ワークロード向けではないと明記されているため、本番は GenAI Enterprise か Basic Enterprise を選び、PoC フェーズのみ Basic Developer で検証するのが実務上の定石です。公式ドキュメントは新規に作るなら GenAI インデックスを推奨していますが、対応するのは英語コンテンツのみで、コネクタも v2.0 に限られます。日本語の社内文書が主体で東京リージョンに置きたい場合は Basic Enterprise を選ぶ判断になります。

まとめ

Kendra は ML ベースのエンタープライズ検索サービスで、自然言語クエリによる質問応答と RAG のリトリーバーとしての活用を提供します。公式の比較表で 32 種類以上と記載されるデータソースコネクタで社内システムと接続し、ACL ベースのアクセス制御でユーザー権限に応じた検索結果を返します。カスタムドキュメントエンリッチメントと FAQ データソースで検索精度を向上させます。ただし Kendra も Q Business も新規顧客の受付を終了しているため、これから検索基盤を作るなら Amazon Bedrock Knowledge Bases が公式の受け皿です。既存インデックスを運用中の場合は、検索 UI のカスタマイズ性や独自の RAG パイプラインという Kendra の強みを活かしながら、コネクタの対応状況を確認して移行計画を立ててください。

参考資料 (AWS 公式)

本ページの一次情報は AWS 公式サイトおよび公式ドキュメントです。最新の仕様 / 料金は次の公式ページで確認できます。

本ページと公式ドキュメントの記述が食い違う場合は、公式ドキュメントを正としてください。