AI 戦略とビジネス価値の創造
このドメインで学ぶこと
このドメインでは、事業の目標に沿った AI 戦略の立て方と、その価値を数字で示す方法を学びます。部門ごとのユースケースの見つけ方、作る・買う・組むの判断、施策の優先順位付けに加え、AI が適さない場面の見極めも扱います。KPI、導入前のベースライン、ROI、先行指標、料金の型に応じた費用の管理を理解し、AI を競争優位につなげる投資の判断ができることがゴールです。AIB-C01 で出題比率 28% を占める最大のドメインです。
重要ポイント
- ユースケースの探し方 - 顧客対応、営業とマーケティング、研究開発、ソフトウェア開発などの部門ごとに探し、AI の能力を具体的な業務の成果に結び付ける
- 作る、買う、組む - 予算、期間、社内の能力、ベンダーの提案、規制への対応で判断し、差別化しない領域は既製品とマネージドサービスを優先する
- 作る場合の前提 - 基盤モデルを一から学習せず、Amazon Bedrock や Amazon SageMaker AI の上で作る
- 優先順位付け - ビジネス価値、実現性、持続性 (運用を続けられるかと環境への負荷の両方の読み方がある)、戦略との整合で順位を付け、拡大、一時停止、終了を判断する
- AI が適さない場面 - 規則で解ける、データがない、費用が効果を上回る、誤りが許されない
- AI への移行で確かめること - 事業の継続、費用の変化、データの準備、性能への影響
- KPI - 有形の効果 (コスト削減、売上の増加) と無形の効果 (顧客満足、従業員の生産性) の両方で定める
- 技術の指標の扱い - 精度などの技術の指標はそのまま KPI にせず、ビジネスの成果に置き換えて測る
- ベースライン - 効果を正しく比べるため、導入前に現状の値を測っておく
- ROI - 得られる効果の額から費用を引き、費用で割る。費用には推論、監視、再学習、ガバナンスの運用費を含める
- 先行指標と遅行指標 - 利用率 (導入率)、利用頻度、満足度、データの準備度は早く表れる先行指標、売上や ROI は遅れて表れる遅行指標
- 料金の代表的な型 - 使った分だけ払う消費型、容量を確保するインスタンス型、利用者の人数で払うシート課金
- 費用の道具 - 導入前の見積もりは AWS Pricing Calculator、導入後の可視化は AWS Cost Explorer
- 競争優位 - 業界の成熟度と競合の動きで投資の水準を決め、独自データと業務への組み込みで持続的な優位を作る
用語と概念
ユースケースと成果の結び付け
AI の施策は、技術から考えるのではなく、部門ごとの業務の課題から考えます。たとえば顧客対応なら問い合わせの自動応答で対応時間を短くする、ソフトウェア開発ならコードの生成で開発の期間を縮めるといった形で、AI の能力を測れる業務の成果に結び付けます。成果が言えないユースケースは、効果を示せず予算の継続も難しくなります。
作る、買う、組むの判断
早く導入したい差別化の要らない業務は、既製品や AWS Marketplace の製品を買い、マネージドサービスを使うのが基本です。専門性が足りない、期間が限られる、社内にスキルを移したいといった場面ではパートナーと組みます。中核の差別化や独自データ、厳しい規制への対応が必要な場合に、Bedrock や SageMaker AI の上で自社用に作ります。
施策の優先順位とポートフォリオ
複数の AI 施策は、ビジネス価値、実現性、持続性、戦略との整合の観点で比べて順位を付けます。始めた後も成果を定期的に評価し、成果の出ている施策は拡大し、前提が崩れたものは一時停止し、見込みのないものは終了します。始めた施策をすべて続けるのではなく、判断の基準を先に決めておくことが大切です。
AI が適さない場面
規則で明確に解ける処理、学習や参照に使えるデータがない処理、AI の費用が得られる効果を上回る処理、誤りが一切許されない処理は、AI が答えになりません。試験では、AI を使わない選択肢が正解になる問題も出題範囲に含まれます。目的は AI を使うことではなく、事業の課題を最適な手段で解くことです。
KPI と技術の指標
AI の KPI は、コスト削減や売上の増加といった有形の効果と、顧客満足や従業員の生産性といった無形の効果の両方で定めます。モデルの精度や F1 スコアは技術の指標であり、それ自体はビジネスの成果ではありません。精度の改善が対応時間の短縮や解約の減少にどうつながるかに置き換えて測ります。
ベースラインと ROI
AI の効果を示すには、導入前に現状の処理時間や費用などのベースラインを測り、導入後の値と比べます。ROI は、得られる効果の額から費用を引いて費用で割って求め、費用には推論の利用料だけでなく、監視、再学習、ガバナンスなどの運用費も含めます。節約できた時間は、別の価値ある仕事に回して初めて効果になります。
先行指標
売上や ROI のような遅行指標は成果が出るまで時間がかかるため、早い段階で成否を見通すには先行指標を使います。代表例は、利用率 (導入率)、利用頻度、満足度、データの準備度です。先行指標が伸びていなければ、遅行指標を待たずに施策を見直せます。
料金の型と費用の管理
利用量の変動が大きい段階や PoC には、Bedrock のオンデマンドのように使った分だけ払う消費型が向いています。2026 年 10 月時点の Bedrock の使った分で払う料金には Standard / Flex / Priority の区分があり、遅れを許せる処理は割安な Flex、応答の速さが要る処理は Priority を選べます。量が安定して予測できるようになったら、インスタンス型、Provisioned Throughput、1 分あたりのトークン数の処理量を確保する Reserved の区分と長期の約束で費用を下げ、即時でなくてよい大量の処理は割引のあるバッチ推論に回します。利用者の人数で費用を見通したいなら Amazon Quick のようなシート課金で、小さく始めて実測してから長期の約束に移るのが基本です。
Savings Plans の対象
Savings Plans は、一定の利用額 (1 時間あたりの金額) を 1 年か 3 年の期間で約束することで料金を割り引く仕組みで、SageMaker AI の長期利用の費用を下げられます。2026 年 10 月時点では Bedrock は Savings Plans の対象に含まれず、Bedrock の費用はバッチ推論、Flex の区分、Provisioned Throughput や Reserved の区分で下げるのが基本です。どのサービスの費用をどの手段で下げるかの区別が問われます。
持続的な競争優位と投資の水準
誰でも使える基盤モデルを使うだけでは、競合もすぐに同じことができます。持続的な優位は、自社だけが持つデータ、業務の流れへの深い組み込み、使うほど改善が進む仕組みから生まれます。投資の水準は、業界での AI の普及の度合いと競合の動きを見て決め、最初から大きな設備や長期契約に踏み込むことは避けます。
理解度チェック
学んだ内容を 5 問で確認しましょう