AWS 無料利用枠の現行制度 - 200 ドルクレジットと無料プランを他社と比較する
AWS の無料利用枠は 2025 年 7 月の改定でクレジット制 (最大 200 ドル + 無料プラン最長 6 ヶ月 + Always Free) に移行しました。現行制度の仕組みと旧 12 ヶ月無料枠との違い、Azure・GCP との比較を解説します。
現行の AWS 無料利用枠 - クレジット制 (2025 年 7 月改定)
AWS の無料利用枠は 2025 年 7 月 15 日に全面改定され、クレジット制に移行しました。新規アカウントはサインアップ時に 100 ドル分のクレジットを受け取り、さらに主要サービスを試すアクティビティの達成で最大 100 ドル分が追加され、合計で最大 200 ドル分を利用できます (2026 年 8 月時点)。アカウント作成時には「無料プラン」と「有料プラン」を選択します。無料プランでは 90 以上の対象サービスにアクセスでき、クレジットを使い切るか開設から 6 ヶ月が経過するとアカウントは自動的にクローズされ、有料プランに移行しない限り料金は請求されません。有料プランは通常の従量課金ですが、同じクレジットが適用されます。予期しない課金が構造的に発生しない点が、旧制度との最大の違いです。
旧 12 ヶ月無料枠は 2025 年 7 月 15 日以前のアカウントのみ
2025 年 7 月 15 日より前に作成されたアカウントには、従来どおり「12 ヶ月無料 + Always Free + 短期トライアル」の旧制度が適用され続けます。旧 12 ヶ月無料枠には EC2 の t2.micro / t3.micro が月 750 時間、S3 標準ストレージ 5 GB、RDS の db.t2.micro / db.t3.micro が月 750 時間など (対象はリージョンにより異なる) が含まれていました。一方、改定後に作成した新規アカウントにこの 12 ヶ月無料枠はありません。Web 上の入門記事には旧制度前提の手順が多く残っているため、アカウントの作成時期によって適用される制度が異なる点に注意してください。
Always Free は現行制度でも存続
Lambda の月間 100 万リクエスト、DynamoDB の 25 GB ストレージ、SNS の月間 100 万パブリッシュといった Always Free (無期限無料) の枠は、改定後も無料プラン・有料プランの双方で存続しています。対象は 30 以上のサービスで、月間の無料枠を超えた分は有料プランでは従量課金、無料プランではクレジットから自動的に消化されます。サーバーレス構成の学習や小規模な常時稼働ワークロードであれば、現在も無料枠だけで運用できる余地が大きい仕組みです。
Azure 無料枠との比較
Azure の無料枠は 12 ヶ月無料と Always Free に加え、初回登録時に 200 ドルのクレジット (30 日間有効) が付与される 3 層構造です。一見すると手厚く見えますが、200 ドルクレジットは 30 日で失効するため計画的に使い切る必要があります。12 ヶ月無料枠は B1S VM が月 750 時間、Blob Storage が 5 GB などで、AWS の旧 12 ヶ月無料枠に近い水準です (AWS の新規アカウントにこの層はありません)。Always Free の範囲では Azure Functions の月間 100 万リクエストは Lambda と同等ですが、Cosmos DB の無料枠は 1000 RU/秒と 25 GB に限定されており、DynamoDB の無料枠と比べるとスループットの制約が厳しい場面があります。また、Azure の無料枠は対象リージョンが限定されるケースがあり、日本リージョンで利用できないサービスが含まれる点にも注意が必要です。
GCP 無料枠との比較
GCP は 90 日間有効な 300 ドルのクレジットと Always Free を提供しています (2026 年 8 月時点)。300 ドルクレジットは Azure の 200 ドルより多く、有効期間も 90 日と長いため、本格的な検証に使いやすい設計です。しかし Always Free の範囲を見ると、Cloud Functions の月間 200 万呼び出しは Lambda の 100 万を上回るものの、Compute Engine の e2-micro インスタンスは米国リージョン限定で月 1 台のみという制約があります。Cloud Storage は 5 GB、Firestore は 1 GB と、ストレージ系の常設無料枠は控えめです。GCP の無料枠は AI・ML 系サービスに手厚い傾向があり、BigQuery の月間 1 TB クエリ処理や Vision AI の月間 1000 ユニットなど、データ分析や機械学習の入門には適しています。ただし、汎用的なインフラ構築の学習という観点では AWS の方がバランスよくサービスをカバーしています。
学習・検証環境としての使いやすさ
クラウドの学習や資格取得の準備において、無料利用枠の使いやすさは重要な要素です。AWS は公式のハンズオンチュートリアルが無料枠の範囲内で完結するよう設計されており、AWS Skill Builder や公式ワークショップとの連携が充実しています。Solutions Architect や Developer の認定試験で出題されるサービスの大半が無料枠でハンズオン可能な点は、学習者にとって大きなメリットです。Azure も Microsoft Learn との連携が強力ですが、サンドボックス環境と実際の Azure サブスクリプションの挙動に差異がある場合があります。GCP は Qwiklabs (現 Google Cloud Skills Boost) で一時的なプロジェクトが提供されますが、自分のアカウントでの継続的な実験には無料枠の制約が影響します。総合的に見ると、AWS は無料枠の範囲、学習コンテンツとの連携、コミュニティの規模のすべてにおいて学習環境として最も整備されています。
無料枠を安全に活用するコツ
無料利用枠を活用する際に最も注意すべきは意図しない課金です。AWS では Budgets を無料で設定でき、無料枠の使用状況をダッシュボードで確認できます。ゼロドル予算アラートを設定しておけば、無料枠を超過しそうなタイミングで通知を受け取れます。また、AWS Organizations でサンドボックスアカウントを分離し、Service Control Policy (SCP) で高額サービスの利用を制限する方法も効果的です。現行の無料プランはクレジットを使い切るか 6 ヶ月経過で自動的にクローズされ、それ自体で課金が始まることはありません。一方、2025-07-15 以前の旧アカウントで 12 ヶ月無料枠を使っている場合は、期限切れ後の課金開始に注意し、カレンダーにリマインダーを設定しておくことを推奨します。クラウドの入門から実践まで体系的に学びたい方は関連書籍 (Amazon)も活用できます。
まとめ
AWS の無料利用枠は 2025 年 7 月の改定で、最大 200 ドルのクレジット + 最長 6 ヶ月の無料プラン + Always Free という構成になりました。超過課金が構造的に発生しない無料プランは、クラウド入門の安全性という点で大きな進歩です。Azure は 200 ドル (30 日)、GCP は 300 ドル (90 日) のクレジットを提供しており、クレジットの金額と期間だけなら GCP が最も手厚い一方、Always Free の広さと学習コンテンツとの連携では AWS に強みがあります。無料プランで基礎を学び、必要になった時点で有料プランへ移行するアプローチが、現行制度でコストリスクを最小化する進め方です。