AWS Outposts

AWS のインフラストラクチャとサービスをオンプレミスのデータセンターに物理的に設置し、クラウドと同一の API・ツールで運用できるハイブリッドクラウドサービス

概要

AWS Outposts は、AWS が設計・製造したサーバーラックまたはサーバー単体を顧客のオンプレミス施設に物理的に設置し、EC2・EBS・S3・RDS・ECS・EKS などの AWS サービスをローカルで実行できるハイブリッドクラウドサービスです。AWS リージョンと同一の API、CLI、マネジメントコンソールで管理できるため、クラウドとオンプレミスで異なるツールチェーンを使い分ける必要がありません。データレジデンシー要件 (データを特定の国や施設から外に出せない規制) への対応や、超低レイテンシが求められるワークロードのローカル処理に適しています。

Rack と Server - 2 つのフォームファクターの選び方

Outposts には 42U フルラックの Outposts Rack と、1U/2U サーバー単体の Outposts Server という 2 つのフォームファクターがあります。Outposts Rack は EC2EBS、S3 on Outposts、RDSECSEKS など幅広い AWS サービスをローカルで実行でき、大規模なワークロードに対応します。ラック内のサーバー構成は複数のパターンから選択でき、コンピュート重視・ストレージ重視など要件に合わせたカスタマイズが可能です。一方 Outposts Server は、ラックを設置するスペースがない小規模拠点や工場、店舗向けに設計されており、EC2 と EBS に限定されますが、既存のラックの空きスロットに収められるコンパクトさが利点です。どちらのフォームファクターも AWS が所有・管理するハードウェアであり、故障時の交換や OS パッチの適用は AWS が担当します。料金は 3 年間のサブスクリプション (全額前払い・一部前払い・前払いなし) で、ラック構成によって月額数千ドルから数万ドルの範囲になります。

データレジデンシーとローカル処理の実務要件

Outposts の最も典型的なユースケースは、法規制によりデータを特定の国や施設内に留める必要があるデータレジデンシー要件への対応です。金融機関の顧客データ、医療機関の患者情報、政府機関の機密データなど、クラウドリージョンへの転送が許可されないデータをローカルで処理しつつ、AWS の API とツールで管理できる点が Outposts の核心的な価値です。もう一つの主要ユースケースは、ローカルでの超低レイテンシ処理です。製造業のリアルタイム品質検査、小売業の店舗内 POS 分析、メディア業界のリアルタイム映像処理など、数ミリ秒のレイテンシが要求されるワークロードでは、リージョンへの往復通信が許容できません。Outposts はリージョンとの接続が一時的に切断されてもローカルで稼働を継続できますが、IAM 認証やコントロールプレーン操作はリージョンに依存するため、長時間の切断時には新規インスタンスの起動や設定変更ができなくなる点に注意が必要です。Azure では Azure Stack Hub が同様のオンプレミス展開モデルを提供しますが、Azure Stack Hub は独立したクラウド環境として動作するのに対し、Outposts はリージョンの延長として統合管理される設計思想の違いがあります。ハイブリッドクラウドの関連書籍 (Amazon) では、オンプレミスとクラウドの統合アーキテクチャが詳しく解説されています。

Local Zones・Wavelength との棲み分け

AWS にはリージョン外にコンピューティングリソースを配置するサービスが複数あり、Outposts との使い分けを理解しておくことが重要です。Local Zones は AWS が主要都市に設置した小規模なデータセンターで、リージョンよりもエンドユーザーに近い場所で EC2EBS を実行できます。ゲーム配信やライブストリーミングなど、特定の都市圏で低レイテンシが必要なケースに適していますが、設置場所は AWS が決定するため、自社施設内にリソースを置きたいデータレジデンシー要件には対応できません。Wavelength は通信キャリアの 5G ネットワーク内に AWS のコンピューティングリソースを配置するサービスで、モバイルデバイスからの超低レイテンシアクセスに特化しています。整理すると、自社施設内にデータを留める必要があるなら Outposts、特定都市圏での低レイテンシが目的なら Local Zones、5G エッジでのモバイル向け処理なら Wavelength という棲み分けになります。実務では、まずワークロードの要件 (データレジデンシー、レイテンシ、利用可能なサービス) を明確にし、それぞれのサービスの制約 (Outposts のリージョン依存性、Local Zones の限定的なサービス対応、Wavelength の通信キャリア依存) と照合して選定するのが確実です。

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