コンピュートリソース最適化 - AWS Compute Optimizer による適正サイジング

AWS Compute Optimizer を使ったリソースの適正サイジングを解説。EC2 ・ Lambda ・ EBS ・ ECS on Fargate ・ Aurora / RDS の推奨事項、コスト削減効果の試算、導入手順を紹介します。

リソースの適正サイジングの重要性

クラウドリソースの過剰プロビジョニングは、代表的なコスト無駄の原因です。本番環境で m5.xlarge を使用しているが実際の CPU 使用率は平均 10% 以下、Lambda 関数に 1024 MB のメモリを割り当てているが実際の使用量は 200 MB 以下、gp2 ボリュームを使い続けているが gp3 に変更すれば 20% コスト削減できる、といったケースは非常に多く見られます。AWS Compute OptimizerCloudWatch メトリクスを ML モデルで分析し、各リソースの最適な設定を推奨するサービスです。過去 14 日間 (拡張メトリクスでは最大 93 日間) の使用パターンを分析し、パフォーマンスを維持しながらコストを最適化する推奨事項を提示します。分析対象は単一のメトリクスではなく、CPU 使用率・ネットワーク入出力・ディスク I/O ・EBS ボリュームの読み書きなど複数のメトリクスで、CloudWatch エージェントを導入した EC2 インスタンスではメモリ使用率も分析対象に加わります (公式ドキュメント記載・2026 年 8 月時点)。

EC2 と Lambda の推奨事項

EC2 インスタンスの推奨では、現在のインスタンスタイプに対して最大 3 つの推奨オプションが提示されます。各オプションにはインスタンスタイプ、推定月額コスト、パフォーマンスリスク (Low/Medium/High) が含まれます。たとえば m5.xlarge (4 vCPU / 16 GB) を使用中で CPU 使用率が低い場合、m5.large (2 vCPU / 8 GB) へのダウンサイジングや、m7g.large (Graviton3) への移行が推奨されます。Graviton への移行推奨は Compute Optimizer の特徴的な機能で、ARM アーキテクチャへの移行によるコスト削減効果を具体的な金額で提示します。Lambda 関数の推奨では、メモリサイズの最適値を提示します。Lambda はメモリに比例して CPU が割り当てられるため、メモリの最適化はコストとパフォーマンスの両方に影響します。過剰なメモリ割り当ては直接的なコスト無駄になり、不足は実行時間の延長 (= コスト増) につながります。

# Compute Optimizer の有効化
aws compute-optimizer update-enrollment-status \
  --status Active \
  --region ap-northeast-1

# EC2 推奨事項の取得
aws compute-optimizer get-ec2-instance-recommendations \
  --region ap-northeast-1 \
  --query 'instanceRecommendations[].{Id:instanceArn,Finding:finding,Current:currentInstanceType,Recommended:recommendationOptions[0].instanceType}'

EBS と ECS の推奨事項

EBS ボリュームの推奨では、ボリュームタイプ、サイズ、 IOPS 、スループットの最適値を提示します。代表的な推奨は gp2 から gp3 への移行です。 gp3 は gp2 と比較してベースラインで 20% 低コストであり、 IOPS とスループットを独立して設定できるため、ワークロードに合わせた最適化が可能です。プロビジョンド IOPS (io1/io2) ボリュームでは、実際の IOPS 使用率に基づいて IOPS 値の削減を推奨する場合があります。 ECS on Fargate の推奨では、タスク定義の CPU とメモリの最適値を提示します。 Fargate のタスクサイズは CPU とメモリの組み合わせで決まり、CPU は 0.25 vCPU (256 CPU ユニット) から 16 vCPU まで段階的に選べ、段階ごとに選択できるメモリは 1 vCPU なら 2 〜 8 GB 、4 vCPU なら 8 〜 30 GB 、16 vCPU なら 32 〜 120 GB という対応です。ただし OS で選べる範囲は異なり、Windows コンテナは 1 〜 4 vCPU に限られます。0.25 / 0.5 vCPU と 8 vCPU 以上は Linux 専用で、Linux ではさらに 32 vCPU / 244 GB までの構成も選択できます (公式ドキュメント記載値・2026 年 8 月時点)。 CPU とメモリの両方が課金対象になるため、適正サイジングがコストに直結します。 Compute Optimizer は各タスクの実際のリソース使用率を分析し、パフォーマンスを維持しながらコストを最小化する設定を推奨します。

導入と Organizations 統合

Compute Optimizer の有効化はアカウント単位で行い、有効化するとメトリクスの分析が始まります。公式ドキュメントでは分析の完了まで最大 24 時間かかると案内されています (2026 年 8 月時点の記載値)。基本機能では CloudWatch のメトリクスを使用して過去 14 日間のデータを分析し、最大使用率のサンプリング間隔は 5 分 (ECS services on Fargate は 1 分) です。有料オプションの拡張インフラストラクチャメトリクス (Enhanced Infrastructure Metrics) は、この分析期間を最大 93 日間まで延長する機能で、対象は EC2 インスタンス・EC2 Auto Scaling グループ内のインスタンス・RDS DB インスタンスです。メモリ使用率の分析は有料オプションではなく、CloudWatch エージェントを導入したインスタンス (Linux は CWAgent 名前空間の mem_used_percent 、Windows は Available MBytes) であれば基本機能でも分析対象になります。ただしエージェントが送信するカスタムメトリクスには CloudWatch 側の料金がかかります。また、推奨事項に推定コストや削減額を表示するには Cost Explorer の有効化が必要です。Organizations 統合により、管理アカウントから組織内の全アカウントの Compute Optimizer を一括で有効化し、推奨事項を集約できます。推奨事項は S3 にエクスポートでき、AthenaQuickSight で組織全体のコスト最適化レポートを作成できます。

Compute Optimizer の料金

以下の料金は 2026 年 8 月時点のバージニア北部および東京リージョンの値で、両リージョンで単価は同一です。Compute Optimizer 自体には追加料金がなく、推奨事項の生成と参照は無料で利用できます。無料で推奨が得られる対象には EC2 インスタンス、EC2 Auto Scaling グループ、EBS ボリューム、Lambda 関数、ECS services on Fargate などがあり、Aurora ・ RDS のデータベースや商用ソフトウェアライセンスも対象です (対象リソースの最新の一覧は公式ドキュメントを参照)。課金される軸は拡張インフラストラクチャメトリクス (Enhanced Infrastructure Metrics) の 1 つだけで、公式料金表では EC2 向けと RDS 向けの 2 行に分かれていますが単価は同じ、リソース 1 台あたり 1 時間 0.0003360215 USD です。課金対象はその月にリソースが稼働した時間数で、31 日 (744 時間) 常時稼働したリソース 1 台なら月約 0.25 USD になります。EC2 Auto Scaling グループは例外で、グループ単位ではなく稼働している EC2 インスタンスの台数分が課金されます。これとは別に、対象リソース自体の利用料金と、分析の元になる CloudWatch のモニタリング料金 (メモリ使用率のためにエージェントが送るカスタムメトリクスなど) は発生します。適正化による削減額はワークロードの過剰プロビジョニングの度合いで大きく変わるため、推奨事項に表示される推定削減額で個別に確認します。

まとめ - Compute Optimizer の活用指針

AWS Compute Optimizer は、ML ベースの分析で EC2 ・ Lambda ・ EBS ・ ECS on Fargate ・ Aurora / RDS の適正サイジングを推奨するサービスです。サービス自体に追加料金はなく、有効化するだけで推奨事項が自動生成されます。過剰プロビジョニングの検出によるコスト削減と、不足の検出によるパフォーマンス改善の両面で効果を発揮します。Trusted Advisor のコスト最適化チェックと組み合わせることで、リソースレベルの最適化 (Compute Optimizer) とアカウントレベルの最適化 (Trusted Advisor) を包括的にカバーできます。全 AWS アカウントで有効化することを推奨します。

参考資料 (AWS 公式)

本ページの一次情報は AWS 公式サイトおよび公式ドキュメントです。最新の仕様 / 料金は次の公式ページで確認できます。

本ページと公式ドキュメントの記述が食い違う場合は、公式ドキュメントを正としてください。