エッジ / 5G コンピューティング - AWS Wavelength と Local Zones で超低遅延を実現する

AWS Wavelength と Local Zones を使った超低遅延コンピューティングを解説。5G ネットワークエッジでの処理、都市部への近接配置、ユースケースと通常リージョンとの使い分けを紹介します。

超低遅延コンピューティングの需要

通常の AWS リージョンでは、エンドユーザーとの距離によって遅延が大きくなることがあり、一部のアプリケーションではこの遅延が許容できません。ゲームストリーミング (クラウドゲーミング) では、遅延の小ささが快適なプレイを左右します。AR/VR アプリケーションでは遅延が酔いの原因になります。自動運転車の推論では、わずかな遅延も安全性に関わります。AWS は、こうした超低遅延の要件に向けて、Wavelength と Local Zones の 2 つのエッジコンピューティングの選択肢を用意しています。Wavelength は 5G 通信事業者のネットワーク内に AWS コンピュートを配置し、5G デバイスからの通信がインターネットを経由せずに直接 AWS に到達します。Local Zones は大都市圏に AWS インフラを配置し、その都市のエンドユーザーに近い場所で処理を実行します。

Wavelength の仕組み

Wavelength Zone は通信事業者の 5G ネットワーク内に設置された AWS インフラストラクチャです。5G デバイスからのトラフィックは通信事業者のネットワーク内で処理され、インターネットを経由しないため、遅延が小さく済みます。Wavelength Zone は提携する通信事業者のネットワークの中に設置され、場所は国や地域で異なります。Wavelength Zone では EC2 インスタンス、EBS ボリューム、VPC サブネットを使用できます。親リージョンの VPC にキャリアゲートウェイを作成し、Wavelength Zone のサブネットを追加する形でデプロイします。Wavelength Zone のインスタンスからリージョンの S3、DynamoDB、RDS などにアクセスでき、エッジでの処理とリージョンでのデータ保存を組み合わせたアーキテクチャが構築できます。

Local Zones と使い分け

Local Zones は人口や産業の集まる大都市圏 (ロサンゼルス、ニューヨーク、シカゴ、ダラスなど) に置かれた AWS インフラで、その地域のユーザーに低い遅延でアプリケーションを提供します。 Wavelength が 5G のデバイス向けであるのに対し、Local Zones は有線 / 無線を問わずその都市のユーザーに低い遅延を届けます。 EC2、EBS、ECS、EKS、RDS、ElastiCache などを利用できます。使い分けとして、5G デバイスからの超低遅延が必要な場合は Wavelength、特定都市のユーザーへの低遅延が必要な場合は Local Zones、それ以外は通常のリージョンを使用します。Local Zones と Wavelength Zone を利用できる場所は国や地域で異なるため、使う前に公式の一覧で確かめます。

Wavelength と Local Zones の料金

Wavelength Zone の EC2 インスタンス料金は通常のリージョンと同等ですが、利用可能なインスタンスタイプが限定されます。キャリアゲートウェイ経由のデータ転送は 1 GB あたり約 0.05 ドルです (2026 年 8 月時点)。Local Zones のリソースには、親リージョンとは異なる料金が設定されています。いずれも利用可能なサービスがリージョンより限定されるため、レイテンシ要件が厳しいコンポーネントのみを Wavelength/Local Zones に配置し、それ以外はリージョンで処理する設計にすると、費用を抑えやすくなります。

エッジに何を置くかの見極め

エッジコンピューティングを設計するうえで重要な点の 1 つは、何をエッジに配置し、何を通常のリージョンに残すかの切り分けです。すべてをエッジに置けばよいわけではありません。エッジの計算資源は限られており、配置できるサービスにも制約があります。許容できる遅延を見積もり、その範囲を超えると体験が損なわれる即時性の高い処理だけをエッジに置きます。大量のデータ蓄積や、時間をかけた分析、管理機能はリージョンに残します。遅延の予算を意識して処理を分解し、本当にエッジが必要な部分を厳選することが、限られたエッジ資源を有効に活かす設計の要点です。

代表的なユースケースと選定

超低遅延が求められる用途には、いくつかの典型例があります。没入感が重要な AR や VR、反応速度が勝敗を分けるゲーム、映像をその場で解析する処理、車両や産業機器のリアルタイム制御などです。これらでは、データを遠くのデータセンターまで往復させる余裕がありません。手段の選定では、モバイル回線からの超低遅延が必要なら通信事業者網内に配置する方式、特定の都市圏でリージョンに近い性能を広く提供したい場合は地理的に近い拠点を使う方式、というように要件で使い分けます。何を解決したいかを明確にして、適したエッジの形態を選ぶことが重要です。

まとめ - エッジコンピューティングの活用指針

AWS Wavelength と Local Zones は、超低遅延が必要なアプリケーションのためのエッジコンピューティングオプションです。Wavelength は 5G ネットワークの中で、Local Zones は大都市圏で、低い遅延の処理を担います。ゲームストリーミング、AR/VR、リアルタイム映像分析、金融取引など、遅延がユーザー体験やビジネス価値に関わるユースケースで検討してください。通常のリージョンで十分な遅延要件の場合は、コストと利用可能なサービスの観点からリージョンを使用することを推奨します。

参考資料 (AWS 公式)

本ページの一次情報は AWS 公式サイトと公式ドキュメントです。最新の仕様と料金は次の公式ページで確認できます。

本ページと公式ドキュメントの記述が食い違う場合は、公式ドキュメントを正としてください。

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