エッジ・ 5G コンピューティング - AWS Wavelength と Local Zones で超低遅延を実現する

AWS Wavelength と Local Zones を使った超低遅延コンピューティングを解説。5G ネットワークエッジでの処理、都市部への近接配置、ユースケースと通常リージョンとの使い分けを紹介します。

超低遅延コンピューティングの需要

通常の AWS リージョンはエンドユーザーから数十〜数百ミリ秒の遅延がありますが、一部のアプリケーションではこの遅延が許容できません。ゲームストリーミング (クラウドゲーミング) では 20 ミリ秒以下の遅延が快適なプレイに必要です。AR/VR アプリケーションでは遅延が酔いの原因になります。自動運転車の推論では数ミリ秒の遅延が安全性に直結します。AWS は WavelengthLocal Zones の 2 つのエッジコンピューティングオプションを提供し、これらの超低遅延要件に対応します。Wavelength は 5G 通信事業者のネットワーク内に AWS コンピュートを配置し、5G デバイスからの通信がインターネットを経由せずに直接 AWS に到達します。Local Zones は大都市圏に AWS インフラを配置し、その都市のエンドユーザーに近い場所で処理を実行します。

Wavelength の仕組み

Wavelength Zone は通信事業者の 5G ネットワーク内に設置された AWS インフラストラクチャです。5G デバイスからのトラフィックは通信事業者のネットワーク内で処理され、インターネットへのホップが不要なため、1 桁ミリ秒 (シングルディジットミリ秒) の遅延を実現します。日本では KDDI と提携し、東京と大阪に Wavelength Zone が設置されています。Wavelength Zone では EC2 インスタンス、EBS ボリューム、VPC サブネットを使用できます。親リージョン (例: ap-northeast-1) の VPC にキャリアゲートウェイを作成し、Wavelength Zone のサブネットを追加する形でデプロイします。Wavelength Zone のインスタンスからリージョンの S3、DynamoDBRDS などにアクセスでき、エッジでの処理とリージョンでのデータ保存を組み合わせたアーキテクチャが構築できます。

Local Zones と使い分け

Local Zones は大都市圏 (ロサンゼルス、ニューヨーク、シカゴ、ダラスなど 30 以上の都市) に設置された AWS インフラで、その都市のエンドユーザーに 10 ミリ秒以下の遅延を提供します。 Wavelength が 5G デバイスに特化するのに対し、 Local Zones は有線・無線を問わずその都市のすべてのユーザーに低遅延を提供します。 EC2 、 EBS 、 ECSEKS 、 RDS 、 ElastiCache など、 Wavelength Zone より多くのサービスが利用可能です。使い分けとして、 5G デバイスからの超低遅延 (1 桁ミリ秒) が必要な場合は Wavelength 、特定都市のユーザーへの低遅延 (10 ミリ秒以下) が必要な場合は Local Zones 、それ以外は通常のリージョンを使用します。日本では現時点で Local Zones は未提供ですが、 Wavelength Zone (KDDI) は東京・大阪で利用可能です。 低遅延 設計について体系的に学びたい方は、関連書籍 (Amazon)も参考になります。

Wavelength と Local Zones の料金

Wavelength Zone の EC2 インスタンス料金は通常のリージョンと同等ですが、利用可能なインスタンスタイプが限定されます。キャリアゲートウェイ経由のデータ転送は 1 GB あたり約 0.05 ドルです。Local Zones の EC2 料金はリージョンより約 10〜20% 高い傾向にあります。いずれも利用可能なサービスがリージョンより限定されるため、レイテンシ要件が厳しいコンポーネントのみを Wavelength/Local Zones に配置し、それ以外はリージョンで処理する設計でコストを最適化します。

まとめ - エッジコンピューティングの活用指針

AWS Wavelength と Local Zones は、超低遅延が必要なアプリケーションのためのエッジコンピューティングオプションです。Wavelength は 5G ネットワーク内での 1 桁ミリ秒の処理、Local Zones は大都市圏での 10 ミリ秒以下の処理を実現します。ゲームストリーミング、AR/VR、リアルタイム映像分析、金融取引など、遅延がユーザー体験やビジネス価値に直結するユースケースで検討してください。通常のリージョンで十分な遅延要件の場合は、コストと利用可能なサービスの観点からリージョンを使用することを推奨します。