AWS Migration Evaluator

オンプレミス環境のインベントリとリソース使用率を収集・分析し、AWS 移行時のコスト見積もりとビジネスケースを自動生成するサービス

概要

AWS Migration Evaluator (旧 TSO Logic) は、オンプレミスのサーバー環境を分析し、AWS への移行コストとビジネスケースを自動的に作成するサービスです。エージェントレスのデータコレクターをオンプレミスにデプロイし、サーバーの CPU、メモリ、ストレージ、ネットワークの使用率を収集します。収集したデータを基に、適切な EC2 インスタンスタイプの推奨、ライセンスコストの最適化提案、オンプレミスと AWS のランニングコスト比較レポートを生成します。経営層への移行提案に必要な TCO (総所有コスト) 分析を数値で裏付けでき、移行プロジェクトの意思決定を加速します。無料で利用可能です。

データ収集の仕組みとエージェントレス設計

Migration Evaluator のデータ収集は、オンプレミスにデプロイするコレクターアプライアンスを通じて行われます。コレクターは VMware vCenter、Hyper-V、物理サーバーに対応し、エージェントレスで各サーバーの CPU 使用率、メモリ消費量、ディスク I/O、ネットワークトラフィックを継続的に収集します。収集期間は最低 2 週間が推奨されており、ピーク時と閑散時の両方のデータを含めることで、より正確なライトサイジング推奨が得られます。コレクターは HTTPS でデータを AWS に送信するため、ファイアウォールのアウトバウンドルールに 443 ポートの許可を追加するだけで導入できます。既に CMDB (構成管理データベース) やサードパーティの監視ツールでインベントリデータを保有している場合は、CSV インポート機能を使って手動でデータを投入することも可能です。この場合、使用率データの精度は下がりますが、迅速にビジネスケースの概算を得られます。

ビジネスケースレポートの読み方と活用法

Migration Evaluator が生成するビジネスケースレポートは、経営層向けのエグゼクティブサマリーと技術チーム向けの詳細分析の 2 層構造になっています。エグゼクティブサマリーでは、現行環境の年間ランニングコスト (ハードウェア減価償却、電力、冷却、施設費、人件費を含む) と AWS 移行後の推定コストを比較し、3 年間の TCO 削減額を提示します。詳細分析では、各サーバーに対する推奨 EC2 インスタンスタイプ、Savings Plans や Reserved Instances 適用時の割引率、Windows Server や SQL Server のライセンス最適化 (BYOL vs License Included) の比較が含まれます。実務では、このレポートを移行の Phase 1 対象サーバーの選定に活用し、コスト削減効果が大きいワークロードから優先的に移行する戦略を立てます。レポートは PDF とスプレッドシート形式でエクスポートでき、社内稟議資料としてそのまま利用できます。

Migration Hub との連携と移行プロジェクト全体での位置づけ

Migration Evaluator は AWS の移行フレームワークにおいて「評価 (Assess)」フェーズを担当し、後続の「動員 (Mobilize)」「移行 (Migrate)」フェーズへスムーズに接続します。評価結果は Migration Hub に自動的に連携され、移行対象サーバーのインベントリとして引き継がれます。Migration Hub では Application Discovery Service のデータと統合し、サーバー間の依存関係マッピングを可視化できます。これにより、移行グループ (ウェーブ) の計画策定が容易になります。実務上の注意点として、Migration Evaluator の推奨はリソース使用率ベースのライトサイジングであり、アプリケーションの性能要件やライセンス制約は別途考慮が必要です。例えば、Oracle Database のライセンスは vCPU 数に依存するため、コスト最適化のためにインスタンスサイズを下げるとライセンス費用も変動する点を見落としがちです。

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